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FPGAによるダイレクトサンプリングAM受信回路

  今回はFPGAを用いてAM受信回路を作製してみました。

動作原理


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  Fig. 1にブロック図を示します。
  ADCで変換された入力信号を[1+fAF(t)]cos(ωct+φ)とします。fAF(t)はAF信号で、変調度100%以内の時|fAF(t)|<1です。
  このときの各ノードでの信号を以下に示します。 NCOの発振周波数ω ~ ωcとすると、(a-I), (a-Q)で信号fAF(t)がDC付近(ωc-ω)に変換されます。高周波側(ωc+ω)の信号は後段のCIC + FIRフィルタで除去されるため(c-I), (c-Q)には現れません。最後にI, Q信号の絶対値をとることで、復調信号fAF(t)が得られます(Fig. 1 (d))。
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  次に、CICフィルタの役割を説明します。これはCIC decimeterとも呼ばれ、サンプリングレートを間引く際に使用されるものです。
  Fig. 1 (a-I), (a-Q)で周波数変換された後の信号では必要な帯域がDC付近に位置し、RFまで対応した高いサンプリング周波数は必要無くなります。不必要に高いサンプリングレートで処理を続けるとタイミング特性が厳しくなり、次段のFIRフィルタの計算量も極端に大きくなるため、サンプリング周波数を落とす必要があります。
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  まず単純にデータを1/Nに間引く場合を考えます(Fig. 2(a))。元の信号には-fs/2 < f < fs/2 (fsは間引き前サンプリング周波数)の成分が含まれます。一方、間引いた後ではナイキスト周波数がfs/2Nになり、-fs/2N < f < fs/2Nの外側の信号は折り返されることになります(Fig.3)。特に、f = mfs/Nの成分はDC付近のエイリアス成分になるため除去する必要があります。
  次にFig. 2(b)のCIC decimeterデータを考えます。これは、Nクロック分の信号を積算して出力とするものです。積分回路なのでLPF型の周波数特性を持ちますが、減衰量自体は大きくありません。ただし、重要な特徴が次式で表される伝達関数のゼロ点の位置です。
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Fig.3に示す通り、先ほど問題となったエイリアス成分とゼロ点が一致しており、これらの成分を除去することができます。また、DC付近の折り返し成分以外の減衰強度は小さいですが、それらは次段のFIRフィルタでまとめて除去することで対処できます。
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構成

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  Fig. 4に全体の構成、Table 1に各ブロックに使用したIPを示します。 いずれもdefaultでライブラリに含まれているIPで、無料で使用することができます。 ADCはAD9283(8bit)を使用しています。今回、DACにはR-2R型を使用しましたが、AFのデコードなのでΔΣ型DACでも構いません。
  今回用いたフロントエンド+ADCの回路図をFig. 5 に示します。 フロントエンドはBGA616の増幅器とアンチエイリアシングフィルタで構成しています。
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  以下の図は、fc = 954 kHz, fAF = 1 kHzのAM変調波(変調度100%)を入力した時の入出力波形です。 黄色が入力、赤色が出力です。 AM変調波が復調できていることがわかります。
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